はじめに
最近テレビやネットなどを見ていると”最新のがん治療”と言ってロボット手術が出てくることが多くなりました。それまで主流だった腹腔鏡手術が古いように言われることもありますが、日本の現状として例えば大腸癌の治療ではまだ腹腔鏡手術の方が多いです。またロボット手術もそもそも腹腔鏡を利用した手術です。ということで今回は腹腔鏡手術について解説していきます。
腹腔鏡手術とは?
腹腔鏡手術は、体に小さな穴を複数開け、鉗子と呼ばれる特殊な器具とカメラを使用して行う外科手術の一種です。従来の開腹手術に比べ、傷が小さいぶん体への負担が少なく、回復が早いのが特徴です。腹腔鏡では二酸化炭素をおなかの中に注入し、膨らまして手術を行います。なぜ二酸化炭素なのかというと、二酸化炭素は燃えない上に人間が自身で作り出せるので人体への害が少ないためです。
腹腔鏡手術のメリット
- 傷口が目立たない 腹腔鏡手術では、通常5mm–2cm程度の小さな穴を数箇所開けることで手術が可能です。そのため、術後の傷跡が目立ちにくくなります。また臍のみを3㎝程度切って1箇所の傷で手術を進める方法もあります。
- 回復が早い 傷口は複数になることが多いですが、一つ一つが小さな傷口のため、術後の痛みが開腹手術より少ないです。入院期間も開腹手術より短縮されるというデータもあります。
- 感染リスクが低い 小さな傷の分治りが早いため、術後の感染リスクが軽減されます。
- より細かい手術が可能 カメラでおなかの中を観察しながらやる手術のため、人の目よりもずっと近くに寄ることができ、細かい血管などを確認しながら手術ができます。そのため開腹手術では困難なミリ単位の操作が可能です。
腹腔鏡手術のデメリット
- 手術時間が長い場合がある 高度な技術を必要とするため、慣れていないと開腹手術に比べて手術時間が長くなる場合があります。逆に達人となると傷の縫合などが少なくなった分、より手術が早くなることもあります。
- 呼吸の状態が悪い際には使用できないことがある 二酸化炭素でおなかを膨らませるとおなかの中から胸が圧迫されます。その結果肺が膨らむスペースが減ります。喫煙や肺の病気などでもともと肺が悪い場合には十分な酸素が取り込めなくなる危険性があります。
- 疾患によっては使用できない、開腹手術へ変更となる 例えば巨大な腫瘍がおなかにあるとカメラで見ることができず開腹手術を選択することになります。また一度おなかの手術を受けるとおなかの壁と腸などがくっつく”癒着”が起きることが多く、これによってカメラでの観察が妨げられ、途中で開腹手術へ変更となることがあります。
- 時に二酸化炭素が害を及ぼす 腹腔鏡で使用している二酸化炭素がおなかの中だけでなく、皮膚の下にも入り込むことがあります。これを皮下気腫といいます。皮下気腫は一部で起こる分には大きな影響はありませんが、皮下気腫が胸のあたりまで及んでくると呼吸状態を悪くすることがあります。
腹腔鏡手術の適応疾患
以下のような疾患で腹腔鏡手術が行われることが一般的です。
- 胆石症や胆嚢炎
- 急性虫垂炎
- 子宮筋腫や卵巣嚢腫
- おなかの悪性腫瘍(大腸癌、胃癌、肝臓癌、腎癌など。膵臓癌は開腹手術が多い)
- 鼠径部ヘルニア
まとめ
腹腔鏡手術は、体への負担が少なく、回復が早い優れた手術法です。しかし、すべての患者に適しているわけではありません。手術を検討する際は、医師からの提案の理由を聞き、自分に最適な治療法を選択しましょう。
腹腔鏡手術についてのご質問やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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