はじめに
がんをはじめとする重病の治療においては治療の期間も長く、そして一つ一つの治療も高額になりがちです。例えば大腸がんの治療をする場合、手術までに全身を精査→手術を実施→結果によって抗がん剤を追加→5年間の通院、となっていきます。そのような治療をやっていく中で経済的に助けとなるのが高額療養費制度です。今回はこの高額療養費制度について解説していきます。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、医療費が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。日本の健康保険制度の一環として、多額の医療費負担を軽減するために設けられています。病気やけがで思いがけない医療費がかかった場合でも、この制度を利用することで経済的な負担を和らげることができます。
高額療養費制度の対象となる条件
高額療養費制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 日本の公的医療保険に加入していること 国民健康保険や社会保険など、いずれかの公的医療保険に加入していることが前提です。
- 自己負担額が一定額を超えること 医療費の自己負担額が「自己負担限度額」を超えた場合、その超過分が払い戻されます。自己負担限度額は所得や年齢によって異なります。特に69歳以下の場合は2万1千円を超える自己負担のところから計算が始まることに注意が必要です。
自己負担限度額の計算方法
自己負担限度額は、所得区分によって以下のように設定されています(69歳以下:2024年現在)
所得区分 | 自己負担限度額(1か月あたり) | 多数該当 |
---|---|---|
区分ア(月額報酬81万円以上) | 252,600円 + (医療費 – 842,000円) × 1% | 140,100円 |
区分イ(月額報酬51.5~81万円未満) | 167,400円 + (医療費 – 558,000円) × 1% | 93,000円 |
区分ウ(月額報酬27~51.5万円未満) | 80,100円 | 44,400円 |
区分エ(月額報酬27万円未満) | 57,600円 | 44,400円 |
区分オ(被保険者が住民税非課税) | 35,400円 | 24,600円 |
さらに、同一世帯内で複数の人が医療費を支払っている場合、それらを合算して高額療養費制度の適用を受けることも可能です。
また1年以内に3回高額療養費制度が適応されると多数該当となり、4回目からは上限額が引き下げられます。
高額療養費制度の申請方法
- 申請書の入手 加入している保険組合や市区町村窓口で「高額療養費支給申請書」を入手します。
- 必要書類の準備
- 医療機関や薬局で発行された領収書
- 保険証のコピー
- 振込先の口座情報
- 申請書の提出 必要書類を添えて、保険組合や市区町村窓口に提出します。
- 払い戻し 申請が承認されると、後日、指定口座に払い戻しが行われます。
高額療養費制度の注意点
- 医療費があとから返金される制度であること 高額療養費制度はあくまであとから返金のため、治療を受けた直後は自身で全額負担する必要があります。療養費制度があると思って準備すると支払い金額が不足する可能性があります。
- 医療機関や薬局ごとに計算される 同じ月内であっても、医療機関や薬局が異なる場合、それぞれの自己負担額が別々に計算されます。入院や外来通院かによっても計算が分かれます。
- 月ごとに計算される 高額療養費制度は月単位で計算されるため、月をまたいだ医療費は合算できません。そのため10月に検査、11月に手術、12月から抗癌剤、などとなると費用は多くなります。ただしがんなど治療を待てない病気ではより早く治療を受けられるタイミングを選ぶべきと個人的には思います。
- 対象外の費用 入院時の食事代や差額ベッド代、予防接種など、保険適用外の費用は高額療養費制度の対象外です。もちろん保険適応でない治療も対象外です。
高額療養費制度を最大限活用するために
高額療養費制度は、医療費負担を大幅に軽減できる大変有用な制度です。しかし、その恩恵を受けるには適切な手続きと条件の理解が必要です。現在上限額の変更も議論されているため、逐一確認することも大事です。万が一に備えて、制度の詳細を把握し、家族や自分の医療費がかさむ場合に備えておくことをお勧めします。
関連リンク
あなたの健康と家計を守るために、ぜひ高額療養費制度を活用しましょう!
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