胃癌は将来なくなる病気?【外科専門医が解説】

疾患解説

はじめに

胃癌は、依然として多くの人々が不安に感じる病気の一つです。しかし、医学の進歩とともに、胃癌を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。今回は、胃癌が将来的に「なくなる病気」になる可能性について、最新の研究と外科専門医の観点から解説します。

胃癌とは?日本での現状は?

胃癌とは胃の内側にある粘膜細胞ががん化する病気です。特に、感染症や生活習慣がリスク要因とされています。

現在日本においては罹患数が男性で2位、女性で4位となっています(2018年)。一方死亡数は男性で2位、女性で5位となっています(2020年)。まだまだ癌死亡の数としては多いですが、ここ数年で罹患数、死亡数ともに減少しています。

その原因とリスク要因

  • ヘリコバクター・ピロリ菌感染
    胃癌の主な原因の一つとしてピロリ菌が挙げられます。ピロリ菌感染が長期化すると、胃の粘膜に慢性的な炎症が生じ、これががん化の引き金となる場合があります。一方で衛生状態の改善やピロリ菌除菌療法が確立されたことでピロリ菌感染自体が減少しており、ピロリ菌を原因とした胃癌が減っています。
  • 生活習慣の影響
    胃癌の原因としてヘリコバクター・ピロリ菌感染以外に「喫煙」は確実とされており、「食塩の摂取」がほぼ確実とされています。

胃癌の治療法と予防方法

胃癌の治療は、手術や抗がん剤治療、内視鏡治療など多岐にわたります。また、予防に力を入れることで、胃癌の発症リスクを下げることが可能です。

  • ピロリ菌除菌
    ピロリ菌感染者に対しては除菌治療が有効とされています。除菌によって胃癌リスクを大幅に低減できることが、さまざまな研究で明らかになっています。除菌療法の詳細については実はすぐ治療できる?ピロリ菌と除菌療法【外科専門医が解説】をご覧ください。
  • 定期検診
    胃癌は早期には症状が出現しない癌であり、定期健診で偶発的に見つかることも多いです。以前は胃のバリウム検査が主流でしたが、内視鏡による観察の方がより精度の高い検査ができるため検診としては内視鏡検査をお勧めします

胃癌は将来なくなる病気?

ヘリコバクター・ピロリ菌感染が激減したことでしばらくは胃癌患者は減少すると考えられます。一方喫煙や食事による胃癌は残念ながらなくなりません。しかし現在胃癌は早期発見されると内視鏡で治療できることも増えており、胃癌によって亡くなる人はさらに減っていくと考えられます。

胃癌の治療法

胃癌はその進行度によって内視鏡治療、手術、抗がん剤治療を行います。

  • 内視鏡治療
    粘膜に存在する早期胃癌が対象となります。その中でも「大きさ」「組織型」「潰瘍の有無」も確認し、治療適応か判断します。当初は内視鏡で治療されても切除した結果追加手術が必要になることもあります。
  • 手術
    癌が胃の中に収まっており、内視鏡で切除できないほど大きいあるいは深い癌では手術を実施します。癌の位置によって胃の一部を切除するあるいは胃をすべて切除するかを選択します。稀に癌が胃を飛び出していても切除できると判断すれば切除することもあります。
  • 抗がん剤治療
    切除できないほど進行した胃癌あるいは切除後に再発した場合は抗がん剤を実施します。最近では免疫チェックポイント阻害薬を併用することで抗がん剤での治療成績が向上してきています。

胃癌を予防するために

  • バランスの取れた食事
    食生活に気を配ることで、胃癌リスクを軽減できます。特に野菜や果物を積極的に摂取し、塩分を控えめにすることが推奨されます。
  • 禁煙と飲酒の節度
    喫煙は胃癌リスクを大幅に高める要因であり、禁煙することでリスクを抑えられます。飲酒も適量を守るように心掛けましょう。

まとめ

将来的に胃癌はなくなる可能性があるのか、という問いに対して、完全に消えるとは言えませんが、予防法や治療法が発展することで、発症率や死亡率を大幅に下げることは可能です。定期的な検診や適切な生活習慣の維持が、胃癌リスクを抑えるために重要です。最新の研究と予防法に注目し、早期発見・予防を心がけましょう。

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