膵臓がんとどう闘う?早期発見と治療法、生活習慣の見直しが鍵【外科専門医が解説】

疾患解説

はじめに

膵臓がんは、初期症状がほとんどなく、発見が遅れることが多い疾患です。しかし、適切な知識を持ち、早期発見や治療に向けた行動を取ることで、より良い結果を目指すことができます。本記事では、膵臓がんの症状や診断、治療法、そして予防のための生活習慣の改善について詳しく解説します。

膵臓がんとは?

膵臓がんは膵臓に発生する悪性腫瘍で、膵頭部がん膵尾部がん2つに大きく分類されます。進行が速く、発見が難しいため、非常に重篤な疾患として知られています。

膵臓がんの特徴

  • 早期発見が困難:初期段階では症状がほとんど現れないことが多いです。そのため膵癌と診断された時点で半数以上がStageⅣであり、予後が厳しいです。
  • 進行が速い:他の臓器への転移が早く、治療のタイミングを逃しやすいです。発見されてから5年間生存する確率(5年生存率)は12.1%と全てのがんの中で最も低いです。
  • 治療の難しさ前述の通り発見時に半数がStageⅣのため、実際に手術が受けられるのは全体の1/3にとどまります。抗癌剤治療も行っていますが、劇的に効くことが少ないのが現状です。

膵臓がんのリスクファクター

膵臓がんを早期に発見するのは困難ですが、リスクファクターを知ることで自分が検査を受けるべきかの目安になります。

まず年齢ですが、膵臓がんは60歳代から増え始め、70歳代以上に多いがんです。      他のリスクファクターとして飲酒や喫煙、糖尿病などが言われていますが、その関連はそこまで強いものではありません。最もリスクとなるのは家族歴です。第一近親者(親、兄弟、子供)に2人以上膵臓がんの人がいると、発症率が通常の6倍以上になることがわかっています

膵臓がんの主な症状

膵臓がんの症状は進行度によって異なりますが、以下のような兆候が見られる場合があります。

  1. 腹痛や背中の痛み膵臓はやや背中側にあるため、上腹部から背中にかけて鈍い痛みが続くことがあります。
  2. 黄疸:皮膚や白目が黄色くなる。これはがんが大きくなり胆管が閉塞するためです。
  3. 体重減少:急激な体重減少や食欲不振によって起こります
  4. 糖尿病の悪化:血糖値を下げるインスリンは膵臓で作られているため、突然の糖尿病発症や既存の糖尿病の悪化がみられることがあります。

症状が現れた場合にはそれなりにがんが進行している可能性が高く、早急に医療機関を受診することが重要です。


膵臓がんの診断方法

膵臓がんの診断には複数の検査が必要です。以下は主な診断方法です。

  • 血液検査:腫瘍マーカー(CEACA19-9など)や膵酵素を測定する。
  • 画像診断:はじめに侵襲のない超音波検査を行い、追加でCT、MRIなどを用いて腫瘍の位置や大きさを確認する。この中でもMDCT(multidetector-row computed tomography)が診断の中で優れた検査である。
  • 内視鏡検査:超音波内視鏡やERCPで詳細な観察実施可能であれば組織生検を実施して膵臓がんを確定させる。

膵臓がんの治療法

膵臓がんの治療法は、がんの進行度や患者の全身状態に応じて異なります。

1. 外科手術

膵臓がんが早期に発見された場合、手術による切除が最も効果的です。膵臓がんで手術を行う際に最も重要なのが”血管にがんが浸潤していないか”です。特に総肝動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈、門脈への浸潤の程度によって手術可能な否かが決まっていきます。

2. 化学療法

手術が難しい場合や再発防止のために行われる治療法です。現在では手術前に化学療法を実施した方が術後の予後がよいことが分かっており、化学療法→手術が一般的な流れになりつつあります。また発見時には切除不能ながんも化学療法によって縮小すれば切除できることもあるため、抗癌剤治療の役割は大きいです。

使用する薬剤としてはS-1やゲムシタビン、FOLFIRINOX療法が主流です。

3. 放射線治療

骨転移などがあれば腫瘍を縮小させるためや症状の緩和を目的に行われます。


予防と生活習慣の改善

膵臓がんを予防するためには、日常生活での健康管理が大切です。また定期的な健康診断で早期発見することが予後を長くするポイントです。健康診断では可能な限り超音波検査を受けましょう。

  • 禁煙:喫煙は膵臓がんのリスクを高める要因の一つです。
  • 適切な食生活:高脂肪食や加工食品を避け、新鮮な野菜や果物を摂取しましょう。特に飲酒による急性膵炎などにならないようにすることが重要です。
  • 定期的な健康診断:特に家族に膵臓がんの既往歴がある場合は注意が必要です。

まとめ

膵臓がんは早期発見が難しい病気ですが、症状を理解し、生活習慣を見直すことでリスクを減らすことが可能です。また、定期的な検査を受けることで、早期診断の可能性を高めることができます。

もし症状や不安がある場合は、専門医に相談することをおすすめします。膵臓がんと向き合うために、まずは情報を知り、行動することが重要です。

膵臓がんに関する正しい知識を得て、早めの対策を始めましょう。

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