肝臓腫瘍について知ろう:原因・症状・治療法を徹底解説

疾患解説

はじめに

肝臓腫瘍は、肝臓に発生する腫瘍の総称で、種類によって発生原因や治療法が異なります。近年死亡者数が減少傾向にありますがまだまだ癌死亡原因の上位にあります特に「肝細胞癌(Hepatocellular Carcinoma, HCC)」、「肝内胆管癌(Intrahepatic Cholangiocarcinoma, ICC)」、「転移性肝腫瘍」の3種類は肝臓腫瘍の中でも重要な分類です。本記事では、それぞれの特徴、リスク要因、診断方法、治療法について詳しく解説します。


肝細胞癌(HCC)

特徴

肝細胞癌は原発性肝臓癌の90.8%を占め、肝臓で最も一般的な原発性悪性腫瘍です。特に慢性肝疾患(肝硬変など)に関連して発生します。肝細胞癌は切除後も高頻度の再発を繰り返すことも特徴として挙げられます。

リスク要因

  • B型肝炎・C型肝炎:ウイルス性肝炎がHCC発生の主な原因となります。日本においてはC型肝炎が多く、(64.7%)、次いでB型肝炎(15.1%)が多いです。
  • アルコール性肝疾患:長期的な過剰飲酒は肝硬変を引き起こし、HCCのリスクを高めます。
  • 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD):肥満や糖尿病に関連。とくに最近では代謝異常関連脂肪肝(MASLD)を原因とする肝細胞癌が増加傾向です。

主な症状

そもそも肝細胞癌をはじめとする肝腫瘍では発症早期には症状が出現しにくいことに注意が必要です。進行していくと次のような症状が出現する可能性があります。

  • 腹部の痛みや圧迫感、右上腹部に腫瘤を触れる
  • 体重減少、食欲不振
  • 黄疸や腹水

このような症状が見られたときには早急に病院へ受診しましょう。

診断

診断の基本は血液検査と超音波検査です。これらの検査の結果、異常が認められればさらに追加で検査を実施します。肝臓の画像検査ではMRIでの検査が最も有効であり、肝細胞癌においてはMRI造影剤であるガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を用いた造影MRIを実施することでかなり詳細な情報を得ることができます。

  • 診断:血液検査(AFP、PIVKA-II)、画像診断(超音波、CT、MRI)

治療

肝細胞癌の治療は多岐に渡り、治療法として肝切除、肝移植、焼灼療法、塞栓療法、肝動注化学療法、全身薬物療法があります。
これらの治療法の選択は腫瘍の大きさや部位だけでなく、肝臓が治療に耐えうるか(肝予備能)によって変わってきます。
初期の肝細胞癌であれば肝切除や焼灼療法を実施することが多いです。ここから進行していくと塞栓療法や全身薬物療法を実施します。肝移植は最終手段ですが、日本では実施できる施設が限られており、全国どこでもできるわけではありません。


肝内胆管癌(ICC)

特徴

肝内胆管癌は、原発性肝臓癌のうち6.4%を占め、胆管の内壁を構成する細胞から発生するがんです。

リスク要因

肝内胆管癌にもいくつかのリスク要因が指摘されていますが、肝細胞癌ほど関連がなく、どれほどのリスクであるかは評価が難しいです。

  • 胆管炎:慢性的な胆管の炎症がリスクを高めます。
  • 肝吸虫感染:東南アジアや東アジアで特に関連が指摘されています。
  • 慢性肝疾患:肝硬変やウイルス性肝炎との関連もあります。
  • 化学物質:印刷業で使用するジクロロメタン、ジクロロプロパンとの関連が言われています。

主な症状

肝内胆管癌も肝細胞癌同様、初期には症状が出現しにくいです。

  • 上腹部の痛み
  • 黄疸(胆管閉塞により発生)
  • 発熱

診断

肝内胆管癌も肝細胞癌同様に診断の基本は血液検査と超音波検査です。これらの検査の結果、異常が認められればさらに追加で検査を実施します。MRIでの検査が有効なのは同じですが、肝細胞癌みたいに効果的な造影剤があるわけではありません一方で胆管の造影検査(ERCP)を実施することで腫瘍の進行度や胆管の閉塞の程度が判定でき、有効な場合があります。

  • 診断:画像診断(CT、MRI、ERCP)、腫瘍マーカー(CA19-9、CEA、場合によってSPAN-1)

治療

肝内胆管癌においても腫瘍の進行度以外に肝予備能が治療方針に関わってきます。

肝内胆管癌では治療方法として切除と薬物療法が治療の柱となっており、移植などは適応がありません。切除可能かどうかは個数のほか、リンパ節転移、遠隔転移を評価して決定していきます。


転移性肝腫瘍

特徴

転移性肝腫瘍は、他の臓器(大腸、胃、乳腺、肺など)からがんが肝臓に転移して発生する腫瘍です。肝臓は血液の流れを受けるため、転移が非常に起こりやすい部位です。

リスク要因

  • 原発がんの種類:大腸がん、胃がん、膵臓がんなどが肝転移を引き起こしやすい。

左の図で分かるように胃や大腸などを出た血液はすべて肝臓に集まっていきます。これが転移性肝腫瘍が多い要因です。

主な症状

  • 症状が出にくいが、進行すると体重減少や腹部膨満感が現れる場合があります。

診断

診断をしていく上で大事なのが”本当に転移性肝腫瘍なのか”ということです。過去に出会った症例では大腸癌を併発した患者さんで、肝臓は肝細胞癌だったというものがあります。肝臓の腫瘍が転移であるか、それとも原発であるかによってStageも変わってくるため、極めて重要な部分です。

転移性肝腫瘍でも基本となる検査は超音波です。血液検査が原発となる癌が何かによって確認する項目が変わってきます。また肝腫瘍のためMRIでの確認は重要です。さらにその他臓器への転移がないか確認するため、PET-CT検査も併せて行うことが推奨されます。

  • 診断:画像診断(CT、PET-CT)、血液検査

治療

転移性肝腫瘍は手術が可能であれば切除を実施します。切除可能かどうかは原発の癌の状態にもよってきます。切除できないと判断したら薬物療法を実施します。転移性肝腫瘍は基本的に原発癌と同じ細胞成分のため、原発癌で使用する抗がん剤に従って治療を実施します。


肝臓腫瘍の予防方法

肝臓腫瘍を予防するには、以下の生活習慣やリスク管理が重要です:

  1. ウイルス性肝炎の予防と管理
    • ワクチン接種(B型肝炎)や定期検査を受ける。
  2. 適度な飲酒
    • 過剰なアルコール摂取を控える。
  3. バランスの良い食事と適度な運動
    • 肥満や糖尿病を防ぐ生活習慣を心がける。
  4. 定期健診
    • 特にリスク因子を持つ方は、定期的な肝臓検査(超音波や血液検査)を受ける。

まとめ

肝臓腫瘍は、肝細胞癌、肝内胆管癌、転移性肝腫瘍といった種類ごとに異なる特徴を持っています。早期発見・早期治療が鍵であり、特に定期的な健康診断やリスク因子の管理が重要です。生活習慣を見直し、肝臓の健康を守る行動を始めましょう。

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